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子供の扱いがうまいペガサス会長とマイクラ前の海馬くん

 

銀糸に覆われた奴の瞳を見る度に、じくじくと胸の内が痛む。訳の分からない、全くもって哀れな感情が心を支配するのだ。
下に組み敷いた奴の橙色の瞳は、常と変わらずただ淡々と俺を見ていた。
嗚呼、気持ちが悪い。気持ちが悪い気持ちが悪い!
奴の底知れぬ瞳の奥の感情に、吐き気がする。
怒りと不安が渦巻く使い物にならなくなった頭はとうに思考をやめた。奴の上に跨り首に手をかけている俺を、誰が冷静だと思うだろうか。

「そのまま、ミーを殺すのですか」

自分がまるで死の瀬戸際に立たされているとは思っていなさそうな、どこか呑気な声が奴の口からポツポツと出てくる。

「ああそうだ。お前をこの手で殺すのだ」

奴の首にかけた両手にぐっと力を込めれば、指に首の骨の硬さが伝わる。その感触に、思わずほくそ笑む。
そうだ、こいつを支配するのは俺なのだ!こいつの命すら手にする人間は、俺だけなんだ!

「私を殺しなさい、海馬ボーイ」

親が子を諭すような、柔らかく優しい声が俺の心の声を聞いたかのように語りかける。
命乞いをするでもなく、自分を殺せとさらに煽る奴に、激しい憎悪がふつふつと湧き出ては口から漏れだし、息の乱れた呼吸が静かな部屋にこだまする。

「だまれ…っ!貴様が俺に指図するな!」

首にかける力をさらに強めれば、奴の口からもひゅっと息を呑む音がした。
死んでしまえ!死んでしまえ!
ぐちゃりとした感情を手に込め首をさらに強く絞める。
俺に貴様など必要ないのだ!俺は何もいらない!だから!

だから、

「海馬、ボーイ…泣かナイで、くだサーイ…」

雫など一粒も流れていない俺の頬を、そう言いながら奴はただそっと拭う。
やめろ、やめろやめろ!

「ふざけるな…っ」

未だに己の首を絞めている相手に向かって、奴は泣くなと言って優しくにこりと笑うのだ。
その笑顔を見ながら徐々に手を離してしまう俺を見ながら、奴はさらに笑みを深めて言う。

「私は、貴方のものデース。海馬ボーイ」

頭を撫でながらそう言うペガサスに、俺は体の中で糸が切れる音を聞きながら、ゆっくりと意識を手放した。

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