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短い

 

「…今、何と言った」

 

口に運ぼうとしていたティーカップを空中で止め、ざわめき出す心を落ち着かせながら、聞き間違いではないのかと己の耳を疑いながら遊戯にそう問いかける。

 

「そろそろ、キチンと気持ちを伝えたいんだ。いつまでも悩んでいられるほど、俺は時間を持っていないからな」

 

目の前のソファーに座りながら、どこか照れたように話す遊戯に、俺はなんと言えばいいのか分からなくなってしまう。何故だか喉もカラカラに乾いてる気がしてきて、カップの中に少しだけ入っていたミルクティーを一気に飲み干した。

 

「だから、お前にも手伝って欲しいんだ。嫌なら、断ってくれても構わないぜ」

 

真剣な表情でこちらを伺ってくる遊戯の眼差しに、嗚呼、とひとつ小さく呻いてしまう。
嗚呼、分かっていたとも!俺のこの想いは、なによりも不確かで、誰よりも汚らしいものなんだと!
急に俯き黙ってしまった俺を怪訝に思ったのか、遊戯が心配そうに腰を屈め顔を覗き込んでくる。

 

「海馬…?どうか、したのか?」

 

遊戯の赤く煌めくルビーのような瞳が、俺の酷く淀んだ青い目を見つめる。じっと奴が見つめる度に、どろりとした感情が俺の内側を侵食していく。
やめてくれ、とぐちゃぐちゃの心の中でただひたすらに唱える。俺のこんなにも醜い姿を、その瞳に映さないでくれ。お前の愛する者を美しく映すのであろう、その瞳で



恋をしたんだ。誰にも叶えられぬ、無意味な恋を

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