top of page
「真実の愛」の少し前
相棒にまた我が儘を言ってしまったなと思いつつ、手にした箱を落とさぬように海馬の元へ行こうとビルの廊下を早足で歩く。じゃらじゃらと揺れる千年パズルをつけたチェーンの重さが、今は少し億劫だ。
そう思っていると、君にとってとても大切なものなのに、と心の部屋の中にいる相棒にくすりと笑われた。
『君は本当に、海馬くんのことになると楽しそうだよね』
ふふふと笑う相棒に言われてしまい、思わず肩を竦めてしまう。俺がはにかみながら千年パズルをコツりと指先で叩けば、照れないでよ!と楽しげな声が聞こえてきた。
『海馬くんも、君と会うときはいつもどこか楽しそうだもん。…脈、あると思うよ?』
いたずらっぽく笑いながら、それじゃあ僕は部屋の中にいるね!と言って、相棒は会話をやめて中へと消えていった。
…やはり、相棒にはかなわないぜ…。
海馬の部屋の前で思わず足を止めれば、一気に顔に血が上るのが分かった。少しばかり心拍数が高くなった心臓を落ち着かせながら、俺は海馬の部屋の扉をノックした。
bottom of page