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ツヤツヤに磨かれたデスクの上に積まれた書類にサインをして、オレにはよく分からねぇことがびっしりと書いてある英語の羅列を目で追って、高そうな黒塗りの判子を押して、また一字一句逃さず読んで、それが終わったら新しい書類を手に取る。
そんな作業を延々と続けているこの男は、これでも16歳という若さである。オレからしたら、人生を棒に振っているようにしか見えねえ。

「社長サンよお、折角の休みなんだろう?何だって仕事なんかしてんだよ」
「ふん…俺は貴様とは立場が違う」
「そら、ご苦労なこって…」

見ているだけで、肩がこりそうだ。というか、当の本人は肩がこるだなんてレベルじゃないんだろう。
なんとなく気紛れで会いに来たものの、タイミングを間違えただろうか。

「なー、ちいっと休憩しようぜ?んで、オレとデュエルでもやりゃあ、いい気分転換になるぜ?」

あまりにも暇なんで、寝っ転がっていたソファーから身を起こしてそう言えば、瀬人が視線をオレに向けた。

「貴様とデュエルをする気分ではない。が…、休息はとろう」
「そーかい、なら別にいいけどよ。昼寝でもすんのか」
「ふむ…」

手にしていた紙を引き出しに仕舞いながら、瀬人は悩むように目を伏せた。相変わらず、黙ってりゃあそんじょそこらの女に負けねえくらい、最高に綺麗な奴だ。

「バクラ」

ボーっと長い睫毛に覆われた青い目を見ていれば、おもむろに瀬人が俺の名を呼んだ。

「あ?なんだよ」
「こちらに来い、相手をしてやる」
「へいへい…」

いくら綺麗な見た目をしていても、やはり中身は以前と全く変わらない。高圧的かつ、自分中心で嫌味な性格。まあ、そんな外面と内側のギャップが昔から人気を集めていたらしいが。

「で?オレ様は何すりゃあいいんだよ」

隣に立ったオレがそう言えば、こっちへと社長椅子を向けた瀬人が、何も言わずに両腕を大きく広げた。

「来い」
「は?」
「何度も言わせるな、来いと言ったんだ」
「いや、来いも何も、もう来てんじゃねーか」
「違う、ここに来い」

そう言って胸を張る瀬人に、思わずキョトンとしてしまう。つまりこれは、抱きしめろと言うことか。

「…明日、槍でも降るんじゃねえか」
「煩い、早くしろ」

ん、と椅子に座ったままオレとの距離を近づける瀬人に軽く笑いながら、脇の下に腕を回してぎゅうと抱きついてやった。ふん、と耳元で満足そうに鼻で笑ったのが聞こえれば、オレの腹に細い腕が回された。

「…あまり、抱き心地は良くないな」
「はっ、アンタに言われたくはないな」

そんな軽口をたたきながら苦しくない程度に腕の中の体を抱きしめ直し、目の前の白い頬に軽いキスをした。

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