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何なんですかねこれ

 

ぴちゃ、と水音が聞こえたかと思えば、今度はがしゃんと何かが壊されたような不快な音が部屋に響いた。ゆっくりと目線を下に降ろしてゆけば、そこには見るも無惨なティーカップだったものの姿が広がっていた。中にはまだ中身があったらしく、じわじわと高級そうな白いカーペットを茶色に染め上げていた。

 

「…海馬ボーイ…ミーは、意味のわからないjokeは大嫌いデース…?」

 

相手を威圧するかの様に低く唸る奴の右目は、思わずゾクリとする程に真剣味を帯びていた。

 

「ただ、貴様がyesと答えればいいだけの話だろう。まさか、自らが清く正しい人間だとでも思っているのか?」

 

小馬鹿にしたように俺が答えれば、更にペガサスの端整な顔に苦渋の表情が浮かんだ。

コツコツと踵を鳴らしながら目の前にまで詰め寄ってやれば、奴が小さく息を呑むのが聞こえる。その様子に鼻で笑いながら、奴の首元の襟をつかみながら一息に捲し立てる。

 

「いいか、俺は貴様の飼い主だ。忠実にワンと鳴いて芸をすれば、皆から愛され褒められる、可愛らしい犬なのだ。さっさと腹を見せて、ご主人様と鳴いて乞うがいい」
「っ!」

 

パリンっと磁器の割る音がペガサスの革靴の下から鳴るのと同時に、犬歯がギラついて見えるほどに開かれた口に、がぶりと噛み付くようにキスをしてやった。

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