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うっすらと目を開けた先に見えたのは、窓の外で金色に輝く三日月と、その光に照らされている男の後ろ姿だった。
未だ夢見心地な頭を起こしながら、俺に背を向ける遊戯に声をかける。

「なにを、しているんだ」

俺の声に振り向いた遊戯は、赤色の目を一度キラリと輝かせ、にこりと微笑んだ。

「月が、綺麗だな。海馬」
「…まさか、詩人気取りか」
「いや。本当に、 綺麗だなと思ってな」

素直にそう告げる遊戯に、ふん、と鼻で笑ってやる。

「そこは嘘でも、そうだと言うものではないのか?」
「別に、今更だろう?」

ひた、と足音を鳴らしながらこちらに近づいてくる遊戯は、笑いながらそう言った。
随分と自信ありげに言う遊戯に、思わず笑みがこぼれる。

「…それも、そうかもしれんな」
「なんだ。いやに素直じゃないか」

意外そうに目を丸くする目の前の男に、すっと手を伸ばす。指先に触れた奴の頬の暖かさに、ひどく安堵する。
二人の間で、とくとくと鳴る二つ分の心臓の音が、今ここに遊戯が手の届く場所にいるのだと実感させてくれる。

「ただの、恋人の甘えさ」

薄く笑みを浮かべていた遊戯の唇に小さく口付けを落とせば、くすぐったそうにくすりと笑った。

「なら、もっと甘やかしてやるぜ」

ギシリとなるベッドのスプリングの音に、条件反射の様に体の奥がぞわりと火照る。
間近になった遊戯の唇に、今度はもっと深く唇を重ねた。

「ん、…は…」
「ふぁ……ンっ…、」

ピチャピチャと淫らな水音が部屋に響く度に、聴覚から遊戯に犯されている様な気がして、ずくんと腰に熱が溜まっていくのを感じる。
口の端から溢れた唾液がシーツを濡らしていくのも気にせずに、ただただお互いの舌を這わせ続けた。

「は…っ、海馬……」
「んッ…っあ…」

繋がっていた口が離れれば、熱の篭った吐息を交えながら遊戯が俺の名を呼んだ。艶のあるその声に呼ばれるだけで、背筋に快感が走るようだった。

「遊戯…っ、あぁ…っあ……!」

すっかり快楽に溺れた声で名前を呼べば、遊戯がゆっくりと愛おしそうに目を細めて、剥き出しになっていた胸に唇を落としてくる。何度もこの男に抱かれた俺の体は、微かな愛撫にすら歓喜するようになっていた。
ぷくりと立ち上がっていたソレをぺろりと熱い舌で舐められれば、思わず甲高い声が出てしまう。

「あっ、んゥ……っ!ぁっ…!」
「はっ……かわいいぜ、海馬…」

うっとりと呟く遊戯の表情を見詰めながら、未だに濡れているソコに指を一本入れれば、クチュリと音を立てながら己の指を飲み込んでいった。
遊戯が俺の感じる部分をひとつひとつ舐めあげる度にソコはヒクヒクと蠢くのだから、自分の浅ましさに思わず笑いが出る。

「ゆう、ぎ…っ!も、いい……から…ッ!」

中に入れた指を一本から二本に増やし左右に割開けば、中にまだ溜まっていた白濁がコポリと溢れ出した。吐き出された欲が流れ出るその感覚にまで、小さく喘いでしまう俺に遊戯がくすりと笑う。

「そう、だな……俺も、限界みたいだし、な……」
「んっ……早く、しろ…!っあぁ、んうゥッ!」

俺の胸を片手と唇で愛撫していた遊戯が、大きく開いていた俺の脚を更に開いて、いきり立ったソレを一気に根元まで突き立てれば、ビリビリとした稲妻のような快感が頭の先まで貫き、大きく声を上げながら身悶える。

「ふぅっ…!んぅ、あ…あっぁぁ…!」
「海馬……っ、好き、だ…!」

目の前に来た遊戯の顔は、とても必死な顔をしていて、お互いに余裕がないんだなと、頭の中のどこかで冷静な俺が考える。

「遊、戯……っん…、っは…おれも…好きだ……」

遊戯の体を抱き寄せながらそう言ってやれば、力強く抱き返されて、思わず、笑ってしまった。

寝台の上で裸で抱き合い繋がっている俺達は、確かに愛し合っているのに、何故だかどこか、虚しくも思えた。

(好きだなんて、いつか来る別れのときに、悲しい枷になるだけだろうに)

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