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赤い舌が覗く唇に口付けながら、ゆっくりと瞼を閉じていく。目の前が暗闇に覆われた今、唇に感じる海馬の体温が酷く心地良い。
そのまま何度か触れ合うだけの軽いキスを繰り返していれば、海馬の方から舌を絡ませてきた。珍しいな、と思いながらも、その舌に俺も応えてやる。
互いの存在を確認するかの様に口内を動く舌に、じわじわと快感が生まれる。ぴちゃぴちゃと水音が部屋に響く度に、海馬の体がぴくりと跳ねるのを感じて、こいつもこの状況に興奮しているのだと分かって嬉しくなる。

「っん…は、ァ……っ」

海馬が息継ぎで唇を離したと同時に、上体を押し倒す。ギシリと音を立てる寝台に、さらに欲が掻き立てられ、青い瞳を潤ませて頭上の俺を見る海馬に、ドクドクと心臓が高鳴った。
目に映るものも聞こえてくるものも、今は全て快楽への引き金になっていた。

「海馬…」

荒く乱れた呼吸を繰り返す海馬の頬を撫でながら、焦れたように名前を呼ぶ。そんな俺の様子を見て、仄かに赤く色付いた顔が、小さな笑みで歪んだ。

「今日は最後まで、するのだろう…?」
「いい、のか?…その、お前に負担がかかるから」
「何を弱気な事を…。俺がここまで許してやっているんだ。いつものように、強気でいればよかろう」

そうは言うものの、今の海馬はどこか焦った様子で、無理に俺と体を繋げようとしている風に見える。
恐らく余裕がないんだろう。俺も海馬も。
俺は、実に不安定な存在だ。今こうやって肌を合わせていられるのも、相棒が体を貸していてくれるからだ。いつ消えてもおかしくない俺に、海馬は不安を感じているんだろう。きっと、自分でも気付かない内に。
もし、この日が最後の逢瀬だったら。それなら、こんなにも性急なことはせずに、ただ二人で静かに別れを待っていればいいのかもしれない。海馬の体と心に消えない跡を残してまで、俺はここにいていいのか。嫌な思いが、次から次へと湧き出てくる。
本当にらしくないほど弱気になっている自分を苦く思っていれば、海馬がふんと鼻で笑った。

「何を悩んでいる。これは俺が決めたことだ。お前が悩まずとも、俺は後悔などしない」
「…海馬、俺は」

そこまで言いかけて、言葉を飲み込んだ。海馬の左手が、俺のドクドクとなる左胸の上に優しく置かれていたからだ。
触れられていると意識した途端、己の心音がさらにバクバクと聞こえてくる。俺の左胸が上下に動く度に、海馬の重ねられた手も同時に動く。
とくりとくりと血液の流れる音を聞きながら、海馬が囁くように言った。

「お前は今、ここにいるだろう…遊戯」

しんと静まった部屋の中で、とくん、と心音だけが聞こえた。

「俺は、今のお前と共にいたいんだ」

その言葉を理解した途端、心の中にあったわだかまりが、するりと抜け落ちた。
ああ、そうか。俺はお前に今、触れていられる。両の腕で抱きしめられるし、己の言葉で好きだと告げることも出来る。それは、俺が「生きている」から出来ることだ。

「貴様が誰の器に入っていようとも、生きていくのは、貴様だ。いつか消えようとも、今死んでいなければ、どうとでもなる」

諭すように言う声がどことなく柔らかで、今まで二人の間で固まっていた不安が、跡形もなく消えたんだなと分かる。
焦ったって、全てが変わるわけではない。

「…ハハ、お前が俺を慰めるなんてな…。だが、礼を言うぜ」
「ふん、項垂れている貴様に喝をいれた迄だ。…で、どうするんだ」
「…決まっているだろう?」

軽口を叩きながら海馬の唇に口付ければ、甘い雰囲気が薄れていたこの部屋に、チュ、とかわいらしいリップ音が響いた。
そのまま薄く開いていた海馬の唇に舌を這わせれば、誘うように口が開き、自らのと俺の舌先でキスをする。ささやかなキスにくすりと笑いながら、海馬の口内に舌を潜り込ませた。

「ん…ぅ…、ふゥ…っ」
「っは…、ン…」

熱い口内を舌でまさぐりながら、シャツの釦をひとつひとつ外していく。ぷつん、と最後まで外し終われば、白く薄い体が曝け出された。
お互いの唾液が混ざり合うまでキスをして、息を吸い込むために口を離せば、海馬の口の端にツウ、と溢れた唾液が流れた。
はあ、と熱の篭った息を吐き、情欲で目を潤ませる艶やかな海馬の姿を瞳に収めながら、細い首の下に浮き出た鎖骨に強く吸いつく。あっ、と声を上げる海馬をちらりと見ながら顔を上げてみれば、そこには赤い印がついていた。

「ここなら、誰にも見えないだろうぜ」

俺がそう言えば、少し不満気な顔をしていた海馬は、仕方ないという風に息を吐いた。
白い肌の上にぽつんと出来た赤い跡にほくそ笑みながら、呼吸をして動く胸に手を滑らせる。
さらりとした肌の上に俺の手が触れる度に、ピクピクと体が動いて、なかなか好感触だなとにやけながら思う。
右の手で胸の辺りを触り、左の手で細い腰を撫でながら、またひとつ小さく跡をつける。日に焼けたことのないような肌に二つ付けられた赤黒いキスマークは、しばらくは消えないだろう。
その事実に嬉しくなりながら、緩やかに撫でていた胸の中心でかたく育っていた乳首に指で触れる。急な直接の愛撫に海馬がビクリと肩を揺らすのを見て、感覚があるのかと少し力を入れてソレを抓めば、ビクッと体が大きく跳ねた。

「っ!遊戯、ッあ!」

腰に置いていた手で反対側の乳首もキュウと抓めば、海馬の口から嬌声が漏れた。
これはもしやと思い、クニクニと左右の手で弄れば、今まで声を出すのを耐えていた海馬が細切れに喘いだ。

「…ここ、気持ちいいのか」
「なっ…そんな、ことは…っんぁ、あ!」

かたくそぼった芽を押し返すようにぎゅうと潰せば、甲高い声が大きくあがる。

「、ぅ…ッ」

恥ずかしそうに赤い顔をそらす海馬がいじらしくて、腰の辺りにずくんと熱が溜まるのを感じた。
俺はまだこんなにも、海馬のひとつひとつに惹きつけられてしまう。

「すき、だ」
「っ…!あ…、」

俺の突然の告白に驚いて、目を見開き頬を染める海馬に愛おしさがこみ上げてくる。
ユラユラと揺れる青い瞳を見つめていれば、海馬がか細い小さな声で、俺もだと呟いた。
(ああ本当に、こんなにも幸せだなんて)
その一言で、俺は一気に幸福感に満たされる。単純だと笑われるかもしれないが、俺にはとてつもなく甘美な言葉に聞こえた。
照れて真っ赤に熟れた顔を視界の端に入れながら、手にしていた胸の尖りに唇を寄せて、ジュウ、と勢いよく吸い付いた。

「ひぁっ!ん、あぁッあ、!」

背を反らしながら大きく喘ぐ海馬の押さえつけながら、口にした乳首をちゅうと吸い上げる。右の手で反対側のものも弄れば、海馬が動く度に脚にあたる硬い感触が、さらに増したような気がした。
舌で弄ってやる度にあっあっと甘い声を出す海馬に気をよくしながら、空いた左の手でスラックスを脱がせてやる。
少々時間はかかったが、海馬がまたビクリと腰を浮かせた瞬間に下着ごと引き抜く。
舐めしゃぶっていた乳首から口を離し下を見れば、テラテラと雫で光るソレがあった。
快感に震えて液を零すソレは、思わず生唾を飲み込むほどに卑猥で、綺麗だった。

「っ…、遊、戯…」

自らの昂りをマジマジと見られて気恥ずかしいのか、海馬が俺の肩を押し返してきた。

「そんなもの、ジロジロ見るな…! 」
「いや…、すごく…綺麗だぜ」
「は……?!馬鹿か、貴様は…っ」
「俺には、お前の全てが綺麗に見えるぜ」
「…っ……あ、阿呆が……!」

ぷいと顔を逸らす海馬にくすりと笑いながらとろとろとカウパーを零すペニスを軽く握れば、ピクピクと快感を求めて揺れ、どくどくと血管が動いているのが分かった。

「とまらないぜ?これ」
「くっ…うる、さい…っ ひっ…!あゥ、ん…ッ」
「…ちょっと、我慢しろよ」
「っ、あ……?!」

先端から溢れてくる液を指で掬いながら、体の奥にあるその場所へと塗り付ける。脚を掴み左右に開き、空いた隙間に体滑り込ませながら指先で後孔をつつけば、海馬が息を飲み込んだ。

「ゆう、ぎ…」
「大丈夫だ…。力を抜いていろ」
「ふ…は、あ……ァあ…!」

海馬が大きく息を吐いたのを確認しながら、つぷりと指を埋め込んでいく。初めての感覚に身悶える海馬を抱きとめながら、ゆっくりと慎重に中へと進んでいく。

「ふぅ……ぅっ…!はあ、ァ…」
「くっ……」

ぐぐぐと人差し指の根元まで差し込めば、海馬が大きく息を吐き出した。きゅうきゅうと指を締め付ける中は熱く、海馬が呼吸をするたびにぐねぐねと蠢いた。

「はァ…あっ…、遊戯…?」

恐る恐る聞いてくる海馬に微笑んで、動いても大丈夫かと問いかける。俺の目を見ながら海馬が目を閉じ数回深呼吸をして、もう動いていいと言った。
まだ海馬は少し苦しそうな表情をしていたが、あまりこちらも我慢はできる状況ではなかったので、できるだけ快感を引き出せるように配慮しながら、そろそろと抜き差しを開始した。

「ゥん!あ…ぐっ…、は」
「かい、ば…」
「っ…!だい、じょうぶだ…!は…、もう、痛くは…ない」
「…なら…もう一本、増やすぜ…」
「っく…!はア…っあ!」

ぐちぐちと音を鳴らして弄っていた後孔に二本目の指をいれながら、ふるふると震える海馬の脚を優しく撫でる。
そうしてゆっくりと時間を掛けて慣らしていけば、だんだんと海馬の口から甘い喘ぎ声が漏れだした。海馬のペニスから零れ落ちるものと腸液とでソコはすでにぐちょぐちょで、簡単に俺の指を飲み込むようになっていた。

「ゆう、ぎ……、ア…もう、んっ!」
「ああ…。俺も、もう限界みたいだぜ…」

もうずっと海馬の痴態を目の前で見ていたんだ、我慢なんてできるわけがなかった。
俺の昂ぶりを押さえつけていたズボンと下着を脱ぎ去り、腹に先端が付きそうなほどに勃起したソレを出せば、青い瞳がさらに欲に染まった。

「遊戯…っ!はや、く…ッ」
「っ…、海馬…!」

俺も海馬もすでに理性がはち切れそうで、はあはあと荒い呼吸が部屋にこだましていた。
必死に理性を保ちながら、海馬の両足を肩に乗せ、ヒクヒクと動く後孔に熱いペニスを押し付けた。
許可を得るように海馬の目をじっと見つめれば、少しの間を空けて、海馬がこくりとうなずいた。
どくどくと高鳴る心臓の音を聞きながらぐっと腰を推し進める。十分に解れたソコはずぷずぷと俺の欲を飲み込んでいった。

「ひあ…!あっ!あっ…!!」
「くう…っ!」
「あぁ…!ゆ、ぎぃ…っ」
「かい、ばっ…!」

決して海馬を傷つけないように、ゆっくりと中へと挿入していく。早く一つになりたいと焦る心を落ち着かせながら、奥まで犯していった。

くぷ…と音が鳴ったのを聞きながら、恥骨の辺りに海馬の肌の暖かさを感じ、俺が全てはいりきったのだなと熱に浮かされた頭でも分かった。

「っは…、ぜんぶ、はいった…のか…?」

臓器を押し上げられるような圧迫感に襲われながらも耐えている気丈な海馬の頬を撫で、そうだと頷く。そうすれば、海馬の青い目が嬉しそうに細められて、俺も心から嬉しくなる。やっと、二人が身も心も繋がれた瞬間だった。

「…熱い…な」

本当に、熱くて堪らなかった。

「ん… もう…うごいて、平気だ…」
「大丈夫なのか…?まだ、辛そうだぜ」
「馬鹿者…俺がそんな軟にみえるか…?」
「…ふ…。ああ、分かった」
「はっ…、ぁふ……!ンんッ」
「っく…、は…」
「あ、う…んんっ」
「っ!海馬…っ」
「ひ、うっ……!」

ゆっくりと奥を掻き回すように腰を動かせば、海馬が声を上げるたびに肉壁が俺を柔らかく刺激した。とろりと溶けた青の瞳をじっと見つめながら、回すような動きから鈍い抜き差しへと変える。肉のついていない太腿を軽く持ち上げずぷずぷと音を立ててペニスを抜いていけば、海馬がその感覚に身悶えて喘いだ。

「ひゥ…っく、?!あ…あ…!!」
「…!ここ…か?」
「あっ…!やっ そこ、ダメ…だ…!ひっ!あッ」

ある一点をペニスでグイと押すたびに、海馬は耐えられないと言った風に声を上げる。挿入したときの衝撃で若干萎えかかっていた海馬のペニスが、そこを刺激するたびにビクビクと揺れて涙を溢れさせた。

「ここが、いいんだな…?」
「っく!あっ、やめろ…!ヒァあ、あっ!おかしく、なる…!あ、ああっ!」
「は…、なれば…いい……!。全部、俺が受け止めてやる…!」
「っ…!この……!ああっあ!や、まて…!」
「お前を…もっと、感じたい」
「あ…!あ、あ…!はァ、っ!」

今までの緩やかな動きを止め、海馬が感じるポイントをガツガツと攻め立てる。髪を振り乱しながら快感に打ち震える海馬を、飢えた獣のように追い立てていく。ぐぽぐぽと空気と粘ついた液を掻き混ぜる淫音が、耳にこびりつくようだった。
激しく絡み合う俺達の間でとぷとぷと雫を零すペニスを扱き、海馬を絶頂へと高めてやる。

「ひぁあ、あっあっあ!も、だめ、だッ…!」
「っ、おれも、だ…!」

ガクガクと震える脚を抱えなおしながら、さらに腰を動かすスピードを速める。ずちょずちょと聞こえる音が、鼓膜をも犯していった。

「あっあ、んあ…!ゆう、ぎ…!もう…!」
「ああ…っ海馬、く…!」
「ひあ、あ!も、あ……!あああっ!!」
「くっ……!」

腹にピシャリとかかる温かいものを感じながら、おれは中へと欲を吐き出した。
ぼんやりとする頭を奮い立たせ、緊張の糸が解け力が抜けた両腕で、絶頂の余韻でビクビクと体を痙攣させる海馬を抱きしめる。重ねた肌の下でバクバクと高鳴る心臓に耳を傾けながら、二人同時に夢の中へと沈んでいった。

眠っている間に、不思議な夢を見た。海馬の面影がある変わった服を着た男に、俺が別れを告げているという夢だった。
俺達は、なぜ離れなければいけないのだろうか、なぜ。
そんな感情が心を支配し始めたその時、ふっと突然意識が覚醒した。
今の光景は何だったのだろうかと体を起こしながら考えていれば、もぞりと海馬が身じろいだ。起こしてしまったかと少し慌てたが、どうやらただの杞憂だったらしく、すやすやと寝息が聞こえてくる。
ほっと息をつきながら、なんとなしにその寝顔を覗き見る。普段は見れないようなあどけない寝顔を晒す海馬の体には、昨夜俺がつけた跡が残っていて、僅かに優越感が生まれた。

「ゆっくり休めよ、海馬」

サラサラと色素の薄い髪を撫ぜながら、そう呟く。
さっきまで見ていた夢のことなんて、すっかり忘れてしまっていた。

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