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ピピピ、となった軽い電子音で、目が覚めた。
閉じていた瞼をゆっくりと開ければ、真っ白なシーツと、風に揺れるレースのカーテンが、うっすらとした朝日に照らされているのが見えた。
まだ寝ぼけているらしい自分の頭をなんとか起こし、微かに残っている昨日の記憶の欠片を紡ぎ合わせる。
ああ、そう言えば、昨夜はまた海馬の部屋に……。
そこまで思い出したところで、ふと隣に、記憶が途切れる瞬間までにはいた筈の海馬がいないのに気付いた。
どこに行ったのだろうと思っていれば、ガチャリとこの部屋の扉が開く。
開いた扉の内側から出てきたのは、少し髪の濡れた、シャツとスラックス姿の海馬だった。海馬が入ってきた瞬間に、爽やかな石鹸の香りが部屋に広がり、風呂に行っていたのだな、と理解する。

「漸く起きたのか、遊戯」

首にかけていたタオルで髪を拭きながら海馬がこちらに近づけば、さらにその香りを強く感じられた。海馬が動く度にふわりと香る匂いが、とても気持ちいい。

「いい匂いだな。好きだぜ、その香り」

すっかり海馬の匂いで気分が良くなった俺がそう言えば、目の前まで来た海馬が、すん、と鼻を鳴らした。

「メイドが、俺に合うと言って買ってきたものだ。まあ、奴の目利きが間違っていなかったということか」

どこか機嫌が良さそうに海馬がそう話しながら、俺にチラリと目を向けた。

「貴様も、入るのなら入ってこい。朝食は用意しておいてやる」

偉そうに聞こえるがその実俺を気遣っているその言葉に、俺はくすりと笑いながら、素直に甘えることにした。

「なら、入らせてもらうぜ」

ベットから降り、扉の前に行こうと一歩踏み出すが、ひとつ大事なことを思い出し、海馬の方へと振り返る。

「海馬」
「なんだ…っ!」

海馬のシャツの襟をグイと掴み、薄く開いていた口に、軽いキスをした。
突然のことに驚き見開かれた青い目を見つめて、鼻孔いっぱいに感じる海馬の匂いにくらりとしながら、ゆっくりと唇を離した。

「っ遊戯、貴様…っ」
「首、付いてるぜ」

なにか言おうとした海馬だったが、俺の言葉に制され、なんの話かわからないと言う風に、小さく首をかしげた。

「その格好で誰かに会えば、昨日ナニをしていたのか、すぐにバレるだろうぜ」

俺がニヤリと笑いながら、首元の赤黒い印を指でなぞれば、海馬が耳をカッと赤くした。

「貴様っ!見えるところにはつけるなと、あれほど…!」
「見えるところにつけないと、所有印とは言わないだろう?」

意地悪く笑いながらそう言えば、海馬がさらに顔を赤くして、悔しそうに顔を歪めながら俯いた。

少々不服みたいだが、どうやら自分が所有物だという自覚は、あるようだ。

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